ヒゴロモソウという魔草がありんす。一般的にはサルビアと呼ばれている、ホントどこにでもある観葉植物。小さな赤い花をたくさん咲かせるアイツの甘い蜜を下校途中にチュッチュした人も多いと思います。

そんな普通の草こそがこの世で最強のブッ飛ばしアイテムだということ、皆さんはご存知でしたか?
結論から先に言っときますけど、飛ばされ加減が別世界過ぎて俺はもう二度とやりたくありません。
Lなりキノコなりでの過度な幻覚は、パニックに至るまでの助走があるからまだ対応できる。しかしサルビアにはそれが無い。覚悟する時間もクソも、「あ、これヤバイ」と思う隙すら与えてくれないんですから。
効く成分の名前こそサルビノリンなんて愛らしい呼び方されてるクセに、まるで容赦の無い飛ばし方をしてくれやがります。
今回はそんなサルビアさんとの出会いから別れまでのお話です。
サイロサイベクベンシス、だっけ?ハワイアンコーポランディアとか!うっわ、自分で書いててなつかしー!…そのね、マジックマッシュルームってヤツをね、よく下北沢まで買いに行ってたんですよ。そういうのを扱ってるイカレた店がいくつかあったんだよね、下北沢って。
そんな店に通ってると、新商品が出るたびに「これもおもしろいよ!やってみる?」なんて、体のいい被験サンプルにされるようになるわけさ。2CT2が出始めるころにはキノコも1パケ800円程度まで値下がりしてたから、店側も利益率の高い新薬を買わせたいってのもあったんだろうね。
そんな押し売りドラッグのひとつがサルビアだったのさ。値段は…忘れた。確か20倍濃縮とかいうジャンキー心をくすぐる添え書きがあったのは覚えてる。
小指より細くて短い小瓶に入れられた2g程度の真っ黒い乾燥植物片で、イメージとしては、うーん難しいな…紙巻きタバコを指で揉んで落ちてくるカスみたいな小ささって言うのかな、とにかく小さくて真っ黒な葉クズだった。
パイプでフツーに燃やして吸うんですよって店員が言うんで、一回にどれだけ吸えばいいのか聞いたら「それはお好みで」ってさ、絶対その店員やったことないよね。
まぁでも面白そうだから買って帰って試してみたわけよ。いざ吸うときになると20倍濃縮ってワードがやっぱ少し怖くてさ、ほんのちょっとだけパイプに載せて、ライターの火であぶってジジジ…これがまークッサイのなんのって。青クサイしカライし、しかも量が少なかったのか大して飛ばねーし。あー、結局は合法モノってこのレベルなんだよなーって、その日はそれでやめたんだ。
そんで別の日。下北沢で飲もうと友人に誘われて行った、今は亡き居酒屋鳥ちゃん。サルビアの話をしたら試してみたいと言うソイツの手に黒い植物片を載せたところへオカミサンがビールを持って来てしまい、「その黒いのなんだい?」なんて言われて大慌てよ。なんとかその場は誤魔化して、オカミサンが消えてからサルビアを吸った友達が一言、
「右側から南極の風が吹いてくる…」
って寒そうな顔して言うもんだからもう大爆笑よ!ここは小さな居酒屋の最奥にある、窓もない小上がりの個室だ。しかもそいつの右にあるのは壁、絶対に風など吹かん。
ものの数分で着地したソイツいわく、説明もままならない初体験の異空間だったらしい。俺はそこまで飛ばなかったけど、人によっては面白いネタなのかな?なんて、そん時は少しうらやましく感じてた。
しばらくして、また別の友人から飲もうと誘われた。場所はまたしても下北沢。ソイツもそういうダメな事が大好きなヤツだったから、話題としてサルビアを持って行った。
今もあるから名前は伏せるが、ソイツの行きつけのバーで飲みながら、「非合法じゃないから!」という甘い考えのもと、カウンター席で堂々とサルビアを吸わせてみた。
そんでソイツが「うおお!うおおお!」なんて飛び始めた矢先!そこのバーテンに「おい!ソレ何だよ!?調子乗ってんと追い出すぞコノヤロー!」と本気で怒鳴られちゃってさ、あおった俺もションボリだし、飛び始めにバッド食らった友人なんて目も当てられないほど激落ちですよ…。
あとで一応ソイツにも感想を聞いてみたけど、バッドの迷宮過ぎて思い出せないって…。あー、でもやっぱ飛ぶことは飛ぶんだなって、そのときもサルビアの可能性をまた少し感じた出来事だった。バーとその友人には悪いことしたけどね。ほんとごめん。
そこからしばらくはサルビアの存在自体を忘れてたんだけど、数ヵ月も経ったころに手持ちのクサが切れたタイミングでふと思い出したわけ。
そこで無知で阿呆な好奇心がモリモリとわいてきちゃってさ、他にネタも無いから試しにサルビアのハイアタックでもしてみるか、と。後から考えると、情報の少ない幻覚剤の一人ハイアタックなんてホント無謀だよね。
ボングならケムリのカラさも軽減されてガッツリいけるだろうって、こぼれるほど山盛り乗っけたの、バカだから。20倍濃縮の幻覚剤を。
ライターでジリジリとアブってボングにケムリを溜めて、いったん息を全部吐き出してから一気にゴボゴボボッ!
やっぱりノドきっつー!クッサー!…で、ブハーッと濃いのを吐き出した、うん、吐き出したところまでは、「俺」は、「人間」だった、ハズ…。
ー ……えっ!?あっ!?なんだ!?どこだここ!?
ー 白い壁、テレビ、時計、窓、そんな連中が、冷ややかに俺を見下ろしてる。もちろん目も口も無い、無表情で無機質な「物体」たちが、明らかに俺に注目していた。
ー 体が動かない。いや、そんなレベルじゃねぇ。いったい、俺は、何だ?部屋の一部!?完全に、ピクリとも動けない。「痺れている」なんて感覚もない。むしろ「動く」「動ける」「動こう」という感覚自体が意識から消え去っている。
ー それどころか、俺自身がそこらで俺を見つめている家具や部屋そのものと同じ部類の「物体」である、という「疑うべくもない事実認識」が恐怖となって迫ってきた。
ー やぁ、時計君。僕は何だっけ?「ブランケットだよ」あぁ、そうなのか、いつから僕はブランケットなんだい?「いつから?ブランケットがブランケットでいるのがいつからだって!?」いや、おかしいよ、僕は人間だったハズなのに…!「ブランケットが何言ってんだ!?あっはっは!いーっひっひ!」家具たちが、俺を、笑う、笑う…。
ー いや!そんなハズはない!だって僕はホラ、人間だから、動けるんだから!
そう思って手を動かしたつもりだったが、(ケムリを吐き出す前にかぶった)ブランケットの端しっこがピラピラと上下するのが見えるだけだった。(その下で手を動かしているんだからあたりまえなのだが…)
ー あぁ…ホントだ、確かに僕は、ブランケットだった…。人間としての記憶、家族や仲間や、学校や仕事や遊びも、全部ブランケットの妄想だったのか…恐怖、恐怖!恐怖!!
ー ……いや!そんなハズは無い!笑っている家具ども!俺は人間だ!見ろ!お、れ、は、人間だ!!
ー 無理矢理に体を起こしてヘロヘロと玄関へ向かい、世界に向かって「俺は人間だ!」と叫びたくてドアノブに手をかけた!
…そこで、ふと我に帰った。待て待て、ドアはヤバイ。あやうく外に出て「俺は人間だ!」と叫び走り回るキチガイになるところだった。
あっちとこっち、という境界線がやっと認識できた瞬間、「やっぱり俺は人間だった!」という安堵に本気で泣き崩れそうになった。
吸入から着地までは5分くらいなのかな。その唐突に始まるラビリンスを楽しむ余裕などまるで与えてもらえないまま、その世界こそが事実であると突きつけられる恐怖たるや…ライターガスの過剰摂取でもまだ甘い。それほど強烈な飛びだった。いや、マジで。
二度とやるものかと決めた数日後、また別のアホ友が来たので、残りのサルビア全てをボングで吸わせてやったら、「カンカンカンかかかかががががあああおおおおお!」なんて叫びまくってたよ。後から聞くと自分自身がジェットコースターになってしまって大変困っていたらしい。同じ恐怖を共感できるジャンキーをそうして複製し、俺のサルビア遊びは終わった。
この通り、サルビアでの楽しい思い出など、ない。ありようが、ない。軽く吸ってパラレルワールドの表層を浮遊するのは悪くないかもしれないが、それだとパンチに欠ける。かと言ってハードコアにキメればラビリンスへ強制連行だ。コントロールできない飛びは恐怖でしかない、という大事なことを教えてくれたシャーマンドラッグだった。
と、こんだけ「飛べるぜ!」みたいな話の後に悪いんだが、日本にあるサルビアではここまで行けないから試すなよ。確かに俺が買ったのはサルビアだが、サルビアの中でも南米の一部でしか取れない特殊な種類のサルビアだからな。
公園に咲いてるサルビアをむしって乾燥させて吸うなんて反社会的なことはやったらダメだぞ。意味無いからな。
少しだけ蜜をチュッチュして、正しく楽しもうぜ!(あー、でもアレはヤバかったなぁ…)