クラック。いいよね、アレは。
こと「瞬時に別世界へブッ飛ばされる度合い」に関して言えば、サルビアと並ぶくらい最強クラスなんじゃねーか?
シャブの打ち専のヤツラ数人に「ポンプだとどんな風に気持ちいいのか?」と聞いたことがあってさ、答えとしては「アブリとは比較にならないほど気持ちいい」とか「この世で最高、としか言えない」とか「こう、グアッ!ときて、うおおおお!来た来た来た!って感じ」なんていう曖昧な表現しか返ってこなくてね、あーこの「言葉にできないレベルのアガリ」は、もしかしたらクラックに近いのかもなーって想像してたのよ。
んでね、俺も一度だけポンプを試してみたわけ。シャブ中がシャブ中をやめたくてもやめられないってほど気持ちいいものなら、ジャンキーを自称する立場としてはまぁひとつの経験として通るべき道かなと思って。
でもね、正直なところ、クラックの圧勝。その時のシャブだって質は悪くなかったし、初めてにしては量も「オレペンでメモ10ちょっと」っていう妥当な線(なんでしょ?)だったはずが、思いっきり期待外れ。確かにアブリよりは断然アガルけど、それでもぜんぜん自己制御の範囲内じゃねーか。
クラックは、やっぱ、別モノだわな。
でね、前の記事を打ってて鮮明に思い出したんだよ、初めてクラックにブッ飛ばされた時のことを。今回はそれを書いてみちゃおうかな、ってラオちゃん思うわけ。ちょっと差別的な表現も出てきちゃうけどゴメンよ。ではではハジマリハジマリィ。
もう名前からしてヤベーんだけどさ、ラリーって名前の白人と知り合ったのよ。もちろんジャンキーね。いつでも何かでラリッてる系の本格派ジャンキー。
ざっくり説明すると、アメリカへ長期旅行したときにクサ関係で知り合って、スシを食ってみたいって言うからおごってやったらなつかれてさ、家が近いもんだからちょこちょこ俺が泊まってたモーテルに来るようになった、そんな刹那的な関係ね。
ノックされてドア開けるとだいたいヘロヘロのニヤケ顔で「スシ!サケ!プッシー!」を連呼しながら抱きついてくるのがけっこう気持ち悪かったんだけど、まぁなんつーか、ここまで完璧なジャンキーもなかなか珍しいわけで、珍獣をあやすような気持ちでつるんでたのさ。
ある日の夜、俺が部屋でゲームをしていたらコンコンコン…コンコンコン…と控えめなノックが聞こえたので「誰?」と声をかけると、
「マ、マ、マン、ナン、ナルィ、ルァリ、ルァァリィィ…」
なんて奇声が返ってきたから、ああやっぱりラリーか、と思ってドアを開けてやった。そしたら

ホントにこんな崩れた顔したラリーがノックしたままの体勢で固まってんの。明らかに意識がドロドロ。こんな状態でよくここまで来られたなって本気で思ったよ。
玄関先でこれはさすがに迷惑だから、腕を引っ張ってソファに座らせた。そんで何食ってるのか聞いたら、「ウア、ウアシッッッドドド」って。一体何枚食ったらこうなるんだよ…バカかよホントに。
もうぜんぜん話にならないんで、パソコンを立ち上げてスクリーンセーバの動く万華鏡を見せてやったらおとなしくなった。つーか壊れた人形が置いてあるみたいにダラリとナナメに座ったまま画面を見つめて固まり、まったく動かなくなった。
そのままほっといてしばらくまた一人でクサ吸いながらゲームやってたら突然ガタッ!と音がして振り向くと、ラリーが万華鏡の中にもぐろうとしてモニタに頭をグリグリ押し付けてんの。あわてて引き離したら、これまた唐突に「アイィンム!ゴーイン!ホォォォゥンム!」と叫んで帰ってしまった。その後ろ姿がゼンマイで動くブリキのオモチャみたいにカタカタしていて、それがすごく気持ち悪かったのを覚えている。
そんな感じで、あるときはコークでハイテンション、あるときはキノコで大笑いしながらと、とにかく何かで飛ぶと俺のところへ避難してくるようになった。
まぁそれはそれで面白かったから介抱してやってたんだが、ある日、買い物に連れてってくれよって、珍しくシラフで俺のところへ来やがった。アイツは免停だか車没収だかで移動手段がなかったからな。俺に頼むってことはどうせ怪しい案件だろう、面白そうだから付き合ってやるよと、別の友達とシェアしてる車で夜のドライブに出かけたんだ。
30分も走らないうちに、暗い森の中にごっそりまとまって建ってる団地みたいなところに着いた。周りをぐるっと金網で囲んである、街灯も少ない暗い団地。
次のゲートの前で止まれって言うんで金網に寄せる形で停車させた。そしたら
「ラオ、俺が出たら鍵を閉めろ。エンジンは切るな。わかったか?」
って真剣な顔して言うもんだから、「お、おう…」と返してラリーの向かう方を緊張しながら眺めてた。
暗闇でほとんど見えないが、白人のラリーが数人の黒い影と話しているのがボンヤリ見える。全員黒人だ。街から離れた森の中、金網で仕切られた団地、それを考えてなんとなくそこが黒人部落的な場所だろうってことは分かったし、そんなところに平気で入って行く白人ラリーのイカレた感覚と、ピカピカのホンダスポーツカーの中で待ってなきゃならないという状況のヤバさに、ここまできてやっと俺は気付き始めた。あいつ、俺をなんつー場所に連れて来やがったんだ…。正直、怖くて仕方なかった。
そこから5分程度かな、ラリーが小走りで戻って来て、今度は「急いで車を出せ」なんて言いやがる。いろいろとイライラしながら、もと来た道をアクセル全開で逃げるように走った。
明るい大通りに出たとたん、俺の気持ちなどツユ知らず、ネタを手に入れてご満悦のラリーがテンション高く俺に話しかけてきた。
「なぁラオ、クラックは好きか?帰ったらお前の部屋でやろうぜ!」
その言葉に、俺のイライラは一瞬で吹き飛んだ。