~ ジャンキーオアシス2 ~
「んで、どれがいくら?」
初めてのルートということで少し緊張しながらもストレートに聞いてみた。安くしてネッ!とチャラく媚びるのも忘れない。
「チョト待ってネ、えーとネ、チョコひとつ5000円でショ」
そう聞こえた瞬間に「え?マジで?」と声を上げてしまった。相場より2千円も高いじゃねーか!
「ホントよ、コレ、トルコ産のインポートだから高いネ、デモいいモノだよネ」
こっちはトばしてくれるなら産地はどこでもいいんだけど、グラム5千はあまりに高い。つーかお前らイラン人なんだからイランから仕入れろよ!自国の麻に誇りは無いのか!
「頼むよー、ふつう3000円でしょ~?安くしてよ~!」
ちょっと粘ったけど頑として折れない理由は実に単純で、都内のイラン人組織がナリをひそめた影響から俺らみたいな亡者がどこからかここを嗅ぎつけて需要過多になっているって話。そりゃそうだ、このルートは今や数少ないジャンキーのオアシスであり、プッシャーの言い値は絶対的な最終価格。つながりにくい電話にも最後まで諦めなかった勝者がたどり着くのは、足元をガン見するコスい売人なワケで、そうさせた原因のひとつである自分たちも大した文句は言えないってことだ。
「あーもう、オッケー、そんで他のはいくらよ?」
そしたらシャブが1本1万と、 思いのほか妥当な値段を出してくる 。あれ?じゃあチョコはホントに値段相応の上物ってことか?と思いきや、玉の値段でまたブッ飛んだ。1粒で5000円だと!チョコも玉もドンブリ勘定が過ぎるだろ!一撃スナックで5000はかなり真剣に悩むレベルだ。電話口からはメルセデスベンツだよブランドだから高いネ~と信用ならないネタ自慢が聞こえてくる。
横でソワソワと聞いていた仲間たちは、もう完全に諦めムード。とにかくそれでいいからキメちゃえと、みんなが同時に投げやりなサインを送ってきた。
「わかった、全部で38万ね、これさ、3万円くらい下げられない?無理?だよね…」
結局一円もまからず、38万で売買契約が完了してしまった。もちろん、最後に言われた「オマケたくさんあげるからネ!」という言葉は俺の心の中だけに仕舞い込んだワケだが。