空港で拉致されて最高な話3

 なんでもノビーは他に呼んだ誰かを待たなきゃならないらしい。つまり平たく言えば薬を売る約束をした相手が遅れてるから今は送って行けないってことだ。おい、俺だってまだガビガビで運転どころじゃ…と言いかけたが、トイレで少し吐いてしまった影響なのか、もしくは一発抜いたせいなのかはわからんが、俺はかなりマトモと言えばマトモな感じには戻っていた。それでもまだ十分すぎるくらいハッピーなんだけどさ、車に残した犬も心配だから先に送ってもらいたい、なんて言われたら受けるしかねーわさ。

 んで、彼女の家はどこよ?と訊くと等々力の先だという。そこそこ遠いがパーティが終わるまでにはヨユーで帰って来られるだろ。俺はノビーから鍵を受け取り、女と一緒に箱を出て駐車場へと向かった。

 外へ出るとヒンヤリとした空気が気持ちよくて、まだ絶賛エクスタシー中だと再認識できる。俺らは足早に車へ乗り込み、オマワリさんに止められないよう急いで246へ向けてハンドルを切った。

「ホントごめんねーありがとうー」

 ノビーの彼女であるバビは、ハエくらい捕って食えそうなほど長いマツエクを着けた黒髪のギャルだ。本当の名前はマミなのにみんなからバビと呼ばれて喜んでいるような、ちょっと足りないコだった。一度俺の家へノビーとバビが遊びに来てそのまま泊まることになったとき、俺が寝たと勝手に思い込んだ二人がセックス始めやがってさ、最後はどこに出すのかと思ったらバビの口に出して飲ませて手も洗わずにパンツ履いて寝る、という衝撃の荒業を俺の部屋でやってのけた。ま、バビはそんなファンキーガールなのさ。

 そんなバビを乗せて馬鹿話をしながら南へ向かったんだが、等々力へ入ってもまだ道が分からないと言う。あっちかな?こっちかな?とかしばらくやってたら標識に多摩川という文字を見つけて、あー!あの川を渡って左!とか言い出した。…あのさ、それってさ、等々力じゃなくて川崎って言うんだよフツー。しかも川崎へ入ってからも迷いに迷って、着いたのはもう夜中も夜中よ。

 なんとかバビを襲うことなく任務を完了させ、また渋谷へ走り出したんだけど、今度は俺が帰り道で盛大に迷っちゃってね。当時はナビもスマホもないから、途中のコンビニでマップルを立ち読みしながらの大冒険、しかも玉の抜けでガビガビしながらのハードコアドライブよ。

 そんでなんとか246に戻ろうと環八を走ってたら!春の交通取締月間でネズミ捕りなんかやっていやがってよ、スピード違反で止められちまったわけ!もーマジで最悪だよ…。玉はほぼ抜けてるからいいんだけど、ノビーの車が黒塗りのキャデで内装に大麻の形したインセンスを山ほどぶら下げた完全な不審車っつーね。しかもリアコンソールには使用感タップリのクサ用パイプも入ってる始末だ。

 これはどうにか好青年を演じてサクッと終わらせるほかないと思った俺は、すぐにドアを開けて自分から外に出てケーサツに話しかけた。「朝からすみません、ご苦労様です!スピードっスか?ちょっと急いでて…申し訳ありませーん!」とサワヤカに、そして平身低頭で免許を差し出した。急ぐのは仕方ないけどスピードオーバーはダメだよーとお叱りを受け、素直にキップへサインをカマせばもう大丈夫!…と思ったら!今度は車検証を出せと!ウギャー!

 いやいや、これは借り物でして、オーナーの彼女さんを川崎まで送った帰りなんです、ええ、ええ…。できるだけ焦らないように受け答えしてるつもりだが、実際のところどんなテンパり具合だったかはわからん。ただ、そこはなんとか理解してもらえたようで、サーセン!サーセン!と頭を下げつついそいそと車へ戻った。

 たたた助かった…と心の中で安堵していたその時、今度はまた別のケーカンが「いい車だね~。へー、友達の車?友達の仕事は何?中に見えるアレは今流行りの大麻の形した香水かい?まずいよーアレは」なんて興味津々で捲し立ててくるじゃねーか!いやー、いい匂いするんですよ、なんてニコヤカに返したけど、正直気が気じゃないどころかヒザはすでにガクガク震えてたよ…。俺はそそくさと車へ乗り込み、窓を開けて「お手数かけました!失礼します!」と好青年風にお別れを告げ、ゆっくりとその場を後にした。他人の女を送って違反キップで八万円…高いデートクラブだマッタク。

 そんでようやく青山へ戻ると、箱の出口でグデッと座ってるノビーを見つけた。「おそかったな」と言うノビーは、どこから見てもヨレヨレ状態。なんでも、中の人混みに疲れて出て来たんだと。これからどうする?って訊いたら、もうここはハケて友達の家で休むべぇと。てことはアレですね、俺じゃない誰かのネタを食いましょうって、そういう意味ですね?そう、ここからが俺達の本領発揮、イカレたアフターパーティの始まりだったのさ!