神奈川のイラン人ルート2

~ 都内の売人が消えちゃった話2 ~

 そんなどこにでもいたはずのイラン人たちだったが、2002年の冬、ついに壊滅の時が訪れる。 警察が取り締まりを強化した結果、とうとう元締めとされた人物が逮捕されるに至ったわけだ。

 季節ごとにやる警察24時!みたいな特番でも盛大に取り上げられてたっけ。バンバン捕まっていく末端ユーザと追いつめられていくイラン人組織の幹部たち!逃げられそうになりながらも最後はやっぱり正義の警察が勝つストーリー!さすがニッポンのポリスマン!…死人が出たことや本当の元締めには手が届かなかったことなんかキッチリ全部隠されて、実に理想的な勧善懲悪の喜劇仕立てになっていたもんなぁ。世の中のフシギ。

 しかし実のところ俺らジャンキーは、それこそ自分たちがジャンキーであるがゆえに、そんな茶番が放送される一年も前からその奇妙な異変に気が付いていたし、つまりは強制的にその渦中へと身を投じるハメに追い込まれたってワケ。


「上野へ買いに行った友達が戻って来ない。売り子の電話もつながらない。」

 2001年の秋には、すでにそんな話があちこちから聞こえるようになっていた。最初のころは取り締まり月間の余波だとか、偶然が重なっただけだとか、仲間とクサを吸って笑いながら話していたんだけど、都内の路地からイラン人プッシャーたちが忽然と姿を消したときにはさすがに焦ったよ。そりゃもう見事にいなくなったからな。

 唐突に、都内の路上ではネタを買えないという、ジャンキーにとってヒジョーに寒い時代が訪れた。