もう20年も前のことになるな。当時使ってたインターネットプロバイダの会員専用チャットルームで知り合ったトランスDJのマサって男とクサの話でひとしきり盛り上がった流れで、そいつ主催のハウスパーティに誘われた。昼前には始めるからぜひ!って話で、日曜日の朝から頑張って早起きして、二時間も運転してそいつの家まで行ったんだよ。なんかネタ食えるかなって期待してさ。
もらった住所へ着くと、そこは同じような形の家がいくつも並んだ普通の住宅街のド真ん中。マサの家は玄関の横に半地下のガレージがあるタイプの白い二階建てでさ、その中からバッコンバッコンと音がダダ漏れしてるわけ。あぁここだなってすぐにわかった。ちなみにこの時点でまだ朝の10時くらいね。
チャイム鳴らしても気づかないだろうな~なんて思いながらドアの前まで行ったら、「WELCOME→」と張り紙がしてあった。確かに右手を見ると柵が開けてあったので勝手に中庭まで抜けると、青々とした芝生の上に白いパラソルとテーブルがいくつか置かれていて、スナックの袋と紙コップが山のように積まれていた。家の外壁にはまたWELCOME!って文字のバルーンがフワフワと踊っているし、庭の木とベランダの間には何本ものキラキラモールが渡されて、手作りのサンシェイドみたいになっている。とにかく気合の入った浮かれっぷりだけは一目で見て取れるにぎやかさだ。
俺自身、真っ昼間っからこんなに堂々と始めちゃうようなパーティは初めてだったし、もしかしたらセコセコな俺の期待を完全に裏切るようなド健康的パーチーかも?って思ったら、朝から二時間もかけてノコノコやって来た自分がちょっとだけ情けなくなった。
庭から家の中を覗いたらキッチンに人影が見えたので「マサ?」と声をかけると、「おー!誰?」と明るく返ってきた。「チャットのラオです、どーも」と握手を求めようとしたところ、マサは冷蔵庫を開けていきなり缶ビールを投げてよこした。
「午後にはたくさん来るからさ、テキトーに遊んでてよ!」
パーティの準備で忙しいマサは挨拶もそこそこに二階へパタパタ走って行きながら、上はハードコアテクノ!一階はトランス!下はアンビエントだから!と元気に説明して消えてしまった。オイ、待て。昼前から始まるんじゃねーのかよ。つーかまだ誰もいねーよここ。ビールひとつで時間つぶせるほど器用じゃねーよ俺。
仕方ないのでドンスコ鳴ってるテクノを聴きながらソファに座ってビール飲んでた。たまにマサ以外の若いニーチャンが何人か通り過ぎたんだけど、そいつらも忙しそうにしてたから挨拶もせずに黙って無視してあげた。
冷蔵庫から3本目のビールを勝手に取り出そうとしたとき、マサが二階からパタパタ走って降りてきて「ラオ君、ピルいる?」っていきなり俺に問いかけてきた。正直、ピルって俺にはなんのことだか分からなかったんだけど、雰囲気的に考えてもコレはきっとアレだね!ボクの大好きな楽しいナニカでゲスね!とビンビンに感じたんで、「ピルいるッ!」と元気に即答した。そいつらはどうやらエクスタシーの錠剤のことをピルって呼ぶグループみたいで、実はそのスカシた感じにけっこうイラッときてたんだけど、ピンク色の錠剤をタダでくれたからコスい笑顔でヘラヘラと頭を下げておいた。
あ!違う!タダだと思って手もみしてたら、そのあとしっかり3000円取られたんだ!手ぶらなクセにタダでもらえると思った俺もかなりダセーけどさ、マサのこの流れはなんかアレだよね!なんだかとってもボクがセコい人みたいじゃん!いや実際セコいんだけど、人って自分のことそんな風に思いたくないじゃん!確かに飛んだよ!飛んだけど!すごくいいネタだったけど!