神奈川のイラン人ルート7

~ 分配チョコパッパ ~

 仲間の家に着いたのはもう3時近くだったのに、みんな手に汗をビチャビチャに握り締めつつ平然とゲームをやっているフリをしながら俺の帰りを待っていてくれた。

 おー、お疲れ~、大丈夫だった~?なんて口では言うが、全員の目が「いいから早くネタを出せ!」と俺を激しく責め立てるので、座る前に腰から封筒を取り出してガラステーブルの上に投げ捨てた。

「数も確かめる余裕なくてさ、ちゃんとあるといいんだけど、人が他にもたくさんいて…」

 なんて俺の話は誰も聞いちゃいない。そういう俺も中身は気になっていたんで、話しながら封筒を逆さまにしてネタをぶちまける。

 オマケでもらったチョコはポケットの中だが、それと同じように細長くパケってあるチョコが5,10,15…20本、シャブのパケが3つ、そんで灰色の錠剤がパンパンに詰められた大き目のパケがひとつ。注文したヤツラが我先にとネタを手にとってニヤけてる横で、俺は玉の数を数える。うむ、だいたい50は入ってるな。ベンツマークもしっかり押してあるのが見える。あのイラン人め、できる男じゃないか。

 玉は俺から各注文者へ5個、10個と、それぞれの数を手渡した。ハンパな数のヤツもいたんで、配った総数は42個、そして残った8個が俺の分。全員に行き渡るころには、みんな子供のようにキャッキャと浮かれ出して止まらなくなっていた。そこまで来てようやく誰かが俺にビールを差し出し、いやマジお疲れ!と言って端から握手握手の感謝祭りが始まった。

「みんなで相談したんだけど、これ、ラオへのお礼な!」

 そう言って2本のチョコが俺の目の前にうやうやしく献上された。チクショー!いいヤツラじゃねーか!オマケの3本と合わせて5本のアガリか!まぁいいだろう!「ここ高いのにサービス悪いよな~」と文句をタレる仲間に合わせて不機嫌なフリをしながら、「じゃあ味見はみんなからのお礼のチョコでキメちゃいますか!」と言うと、おお~!と拍手が沸き上がった。

 うちらはチョコをやるときジョイントにはせず、おのおのが好きな大きさに千切ってパイプで吸うのが通例で、そのときも俺から順番に1パケが無くなるまでグルグルグルグルとラリーが続いた。カチッカチッ、ジジジッ、ボハァアアげほげほ!カチカチジジジ、ボハァげーっほげほげほ!

 こうして初取引の緊張はゆっくりと解けていき、素敵な夢でポケットをいっぱいにしたジャンキーたちは、笑顔いっぱいのまま朝日の中へ散り散りに消えて行った。