~ 新ルートでの初取引2 ~
バタン、バタン、バタン、バタン、バタン、バタン…
夜中の住宅街に響き渡るドアの開閉音が止まらない、ひたすら止まらない、ホント笑えるほど止まらない。
どうぞどうぞと行儀よく、入るときは緊張の面持ちで、出てきたら自分の車まで足早に、エンジンとタイヤを鳴らして去っていくその不良どもも、まぁ内心は俺と同じくみんなビビッてたんだろうね。一切のトラブルもなく、列はスムーズに流れていく。そしてようやく、俺の番がやってきた。
「アナタ、ナニ欲しいヒト?」
モノと数を伝えたら「あー、アナタね、コレ全部入ってるダカラ大丈夫」とズッシリ重たい封筒を渡されたので、こちらも同じくらいズッシリ重たい封筒を渡した。「コレはオマケね」と細長くパケられたチョコを3本くれたのは俺だけの秘密にしたが、正直なところ「これだけかよ…」と内心複雑な気分だ。ため息をつきながらもちゃんと中身を確認しようと思ったところ、大丈夫ダカラ!問題ないダカラ!と手でシッシッ!をされて追い払われてしまった。ああ、それでみんなの出入りが早かったのか。
てゆーか不安じゃない?お互いに!渡した金も数えないし、次は新聞紙でも入れて渡してもバレないんじゃないか?ってくらいの流れ作業なんですけど。でもまぁわかった、信じるよ。ありがと!と言いながら車を出ようとすると、そのイラン人は少し憐れむような目をしながら「ヤリ過ぎるとカラダに悪いヨ」と俺に言った。
……いやいやいやいや!どの口が言ってんだヨ!こっちもナマっちゃうヨ!わかる?この想定外の衝撃!もともとこんなプッシャーなんて仕事をしたくて日本へ来たわけじゃないとか、自分のせいで人が壊れるかもしれない罪悪感とか、なんかいろいろあるんだろうけどさ、こんなドラッグ満載の封筒を渡しておいて、お前がそれ言うか?って思っちゃうでしょフツー!俺コレたぶん一生忘れねーよ!
ちょっと面白かったのでニヤニヤしながら足早に車へ戻り、少なくなったギャングカーの間を抜けて仲間のところへ急いだ。途中、明るい交差点の信号で止まったときに封筒を開けてみたが、確かにオーダー通りっぽい量の何かは見える。それをひとつひとつ確認してる余裕はないから、封筒をそのままジーンズの腰のスキマへ突っ込んでからまた走り出した。ふと左を見ると、「神奈川県 麻生警察署」から漏れた光が俺のネタを照らしてくれていたことが分かった。気付かなかった俺も俺だが、ちょっとだけ寒気がした。