白昼夢を追いかけて3

ー 眉間とコメカミの奥、脳みその真ん中あたりがキリキリと絞られるような感覚がジワーンと続く

ー テレビ画面に映るSF映画の宇宙船や銀河のリアリティに圧倒されそうになる

ー 映像の美しさや物語の深さに感動したり、それを見ている俺とササキという存在や空間に思いを馳せたりと、さまざまな思考が同時にグルグルと回り出す

 1枚食ってから30分もしない内に、俺は思考のラビリンスへ迷い込んでいた。脳ミソを絞られるような強制感はあるものの悪い気分ではなく、ギンギンのキキメに翻弄されつつSF映像にヤラれ続ける。うん、やっぱりこのくらい強めに入れた方がドラッグは楽しいよな。

 ただ残念なのは、朝から入れ続けてる関係で、せっかく一枚入れても5~7割程度しか効かないってところ。Lの連投は本当に燃費悪すぎるんだよなぁ…。いや、もしかしたら充分に効いてはいたのかもしれない。つーかきっとガッツリ効いてたんだろう。けど、「連投したから効かない」という思考に絡み取られたって感じか。

 どんなドラッグを入れるにしろ、「グルグルグルで暑い寒いもわかんなーい!もうらめぇ~!」みたいな場所が好きな俺だから、この「あと少しなのに!」が惜しくてたまらない。

 そう、これがまずは白昼夢がナイトメアに変わった一撃目、食いたい~もっと食いたい~!の連鎖に次ぐ連鎖…。この渇望ってキツいよね。「満足いってない自分」を超認識、そしてササキに悪いからもう言えない、でも食いたい、この迷宮ね。そうか、ナイトメアというよりもラビリンスだったんだな、アレは。

 そんなグルグルに困り果てている俺をよそに、ササキは「アシッド向けのモーションキャプチャー映画があるから見よう」って、ナイトメアビフォアクリスマスみたいなカクカクした映像を流し始めた。

 思考のラビリンスでグルグルの俺の頭に飛び込んでくるのは、ヒョロヒョロで真っ黒で性格のクソ悪い魔女とかネズミの群れとか全部枯れてるヒマワリ畑とか、もう完全にバッド行き確定要素たっぷりの暗い映像ばかり…。

 たぶんそこにクサがあったらきっと面白かったとは思う。スーパーファンタジーへの強制連行も、セットとセッティングによっては最高に楽しいからな。

 しかしその時の俺は、バッドになり切ることも、バッドを楽しむほどの飛びも、どちらにも方向転換できないほどの「もっと食いたい欲」に憑りつかれ、「この魔女、怖くない?」って一言くらいしか口にできないようなネガティブ思考に滅多打ちにされちまったわけよ。

 ま、これが俗に言う「バッドそのもの」ってヤツかもしれないが、それでも実は、珍しくそんな状態になっている自分がおかしくてたまらなかったし、思考の多段階構造というか、並行思考の波と若干の全能感にウスラハッピーを感じてはいたんだけどもね。


 しばらくそんな状態でモジモジしていた俺だったが、どういうことか食欲だけは止まらなくてね、クサも吸ってないのに「怖い!怖い!」言いながらスキヤキをマンチマンチよ。肉やシラタキの食感がクッソ面白くってさ、気付けば鍋は空になり、映画もクライマックスの大パニックで頭ん中もグルングルン。

 こんな飛びも興味深いなーなんて軌道修正しかけたところに、さぁやって来ましたよ今宵二撃目のナイトメア、ザ・超腹痛

 実は昼の映画館でも2回ずつウンコしてんのね、俺とササキ。つまりは昼のラーメンに当たってたみたい。いや、その前のL?そもそも昨日の深酒?まぁなんにせよ、下痢気味って程度だったうちら二人のステータスが、俺だけが勝手に始めたスキヤキマンチによって、紫文字の猛毒状態にランクアップされちゃったわけさ。こ・れ・が!キツかった!!

 そこまでにも2-3回かな、俺もササキも交互にトイレに籠もってブリュブリュとクソを垂れては、そのたびに映画を止める。止めるとヒマだからビール飲む。飲むとツマミ食う。食うと腹が痛くなる。これの繰り返し。ササキがその連鎖から抜けるころ、今度は俺が勝手に猛毒状態へ。映画は止めなくていいと伝えてトイレに籠もると、魔女の声や第九みたいな絶望的音楽が壁を抜けて聞こえてくる。おおお!おおおおお!

 腹はクッソ痛ぇし、クソし過ぎのケツ拭き過ぎでアナルは痛ぇし、朝方にはマジで生理来たんかと勘違いするほど便器が血で真っ赤だしよ、あの時ほどウォッシュレットを渇望したことは他に無いよねホント。

 たぶんLが効いてる時間の半分くらいはトイレにいたと思う。マジで。しかもよ、そのトイレも困ったもんでさ、すっげー狭くて目の前がドアなんだけど、そのドアがイイ感じの木目調なのよ。

 腹痛ぇぇぇ…イタタタタタ…魔女コワー音楽コワー…おおう!木目ヤッヴァー!はうぅぅぅ腹いってぇぇぇ…うっわー目ぇつぶると曼荼羅!目ぇ開けても木目ぐにょぐにょ!あぁぁでも腹いててて…。

 すごくない?飛びの方向性がもうバラッバラ。クソも出し切ってるのにまだ腹は痛くて、だからどうしても踏ん張っちゃう。踏ん張るとケツのアナルに激痛が走ってキュッと締める。締めると便器に血がビタビタと落ち、その赤黒いイメージが曼荼羅になって脳へ直接襲い掛かってくる。クッソ楽しいけどクッソ痛いの。

 トイレん中で「ニヒヒ!ウヒッ!イッタタタタタ!イヒヒヒヒ!」とか、ジャンキー界でもドン引かれる系の迷惑野郎にジョブチェンジだよクソが。


 結局そのまま朝までトイレとリビングをひたすら往復し続けた1枚食いの俺がようやく眠れたのが昼前。そんで起きたのが夕方の5時過ぎ。もう外暗いわ。やられた方はたまったもんじゃないよな、ホントごめんよササキ。

 そこから夕飯でもって話になって、行きつけのモツ焼き屋で軽く一杯、そして帰りの駅まで見送ってくれたササキから放たれたトドメの三撃目ナイトメアが俺の胸にズブリと突き刺さった。

「ラオさ、昨日みたいな食い方は、やっぱりちょっとダサいと思う…」

 ご、ごめんね、俺も比較的そう思うよ…としか言えず、そのまま電車でシオシオになりながら帰った俺だった…。

 こんな素敵な白昼夢、アナタも見てみる?ウヒヒヒヒ!